投資信託にも色々なシリーズがありますが、ハイテク株で運用する投資信託は数多く組成されています。
とくに2020年のコロナショック後のバブル相場では大きくリターンを出し注目を集めましたが、バブルがはじけた今、落ち込んでいるファンドも多いです。
今回取り上げるのは日興アセットマネジメントが提供するグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドです。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドも低迷し続けていますが、果たしてこのまま保有し続けて良いのでしょうか。
それとも損切りしてでも売るべきなのでしょうか?
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの特徴や今後どうなるかを分析していきます。
他にもハイテク株の投資信託について分析していますので、そちらも合わせてご一読頂ければと思います。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドはどんなファンド?
基本情報
一応、まずはグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの基本的な情報から確認しておきましょう。
投資対象 | 株式 |
---|---|
投資対象地域 | グローバル |
為替ヘッジ | なし |
投資形態 | ファンド・オブ・ファンズ |
委託会社 | 日興アセットマネジメント |
投資対象はグローバルの株式です。世界中の上場株式の中から運用戦略に沿った株を探し出し投資していきます。
委託会社(=投資信託の運用会社)を見ると日興アセットマネジメントとなっています。これだけ見ると日興アセットマネジメントが運用を行うように見えますね。
ですが、実際の運用者は異なりますのでもう少し詳しく見ていきましょう。
実質的な運用者は誰?
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの運用プロセスは次のようになっています。
出典:交付目論見書
図の右下、金色の枠の部分に「銘柄選択においてはアーク社の助言を受けます。」と書いてありますね。
アーク社(ARK)とは2014年に設立された米国の運用会社です。自らを「破壊的イノベーション」専門運用集団と称しています。
資産運用の結果が評価されて、2018年には「Bloomberg’s Top 50」に入る成績を残しています。
日興アセットマネジメントはARK社に一部出資をしており運用の戦略的パートナーとして協力しています。
以前、紹介した「ゼロコンタクト(デジタル・トランスフォーメーション株式ファンド)」も日興アセットマネジメントとARK社による投資信託です。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの特徴とは
投資コンセプト
さぁ、それではグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドはどんな資産運用を行うのでしょうか。
ARK社は、もともと世界を大きく変えるイノベーションに注目して投資しています。さらに、本ファンドでは近年世界で重要視されているSDGsの視点を取り入れて銘柄を選定しています。
出典:日興アセットマネジメント
イノベーションとは具体的には次のような分野を指します。
- ゲノム解析
- ロボティクス
- ブロックチェーン
- エネルギー貯蔵
- 人工知能
こういった分野で社会的課題を解決できる企業に投資していくのが、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの運用戦略となります。
では、具体的にどんな銘柄に投資しているのか見ていきましょう。
ポートフォリオ上位10銘柄はどこ?
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの投資先の上位10銘柄はこちらです。
(2023年8月31日時点)
銘柄名 | 比率 | 国 | 業種 | |
1 | Tesla Inc | 8.7% | アメリカ | 一般消費財・サービス |
2 | COINBASE GLOBAL INC -CLASS A | 7.1% | アメリカ | 金融 |
3 | Block, Inc. Class A | 6.1% | アメリカ | 金融 |
4 | Roku, Inc. Class A | 5.0% | アメリカ | コミュニケーション・サービス |
5 | ZOOM VIDEO COMMUNICATIONS-A | 4.6% | アメリカ | 情報技術 |
6 | TWILIO INC -A | 3.9% | アメリカ | 情報技術 |
7 | Pacific Biosciences of Calif | 3.6% | アメリカ | ヘルスケア |
8 | UIPATH INC CLASS A | 3.6% | アメリカ | 情報技術 |
9 | Trimble Navigation Limited | 3.4% | アメリカ | 情報技術 |
10 | CRISPR Therapeutics AG | 3.2% | スイス | ヘルスケア |
テスラは皆さんご存知のイーロンマスク氏が率いる電気自動車の会社です。Blockは決済ソフトウェアを提供する金融サービス・ソフトウェア企業です。
Rokuはメディアストリーミング端末を提供しています。ZOOMもランクインしてますね。ビジネスミーティングにも良く利用されますので皆さん馴染み深いかと思います。
アメリカ以外の企業だとCRISPRはスイスを拠点とするバイオテクノロジー企業です。
このようにグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの投資先はハイテクグロース株中心となっています。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの掲示板での評判は?
それでは、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの掲示板での評判はどうなっているでしょうか。
Yahooファイナンスの掲示板を見てみましょう。
出典:Yahooファイナンス
値下がりによって損失を出している人が多く、かなり評判は悪いですね。2021年に組成されて以来、成績は低迷しているのでこういった評判になるのも仕方ないかもしれません。
出典:Yahooファイナンス
また、証券会社のやや強引な営業に辟易している投資家の方も多い様です。
1000万円投資して半分以上値下がりしているのに買い増しをすすめられたとあっては、不快な気持ちになるのも共感できますよね。
掲示板を見た限りでは、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの評判は残念ながら悪いです。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの手数料は
続いて、手数料についてもチェックしておきましょう。
同じハイテク株に投資する投資信託のグローバルAIファンドとゼロコンタクトと比較してみましょう。
グローバルAIファンド | ゼロコンタクト | グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド | |
購入時手数料 | 3.3% | 3.3% | 3.3% |
信託報酬(実質) | 年率1.925% | 年率1.7985% | 年率1.7675% |
解約手数料 | なし | なし | なし |
購入時手数料は3つとも同じで3.3%です。解約手数料も全てなしです。
信託報酬は若干の差はありますが、概ね1.8%程度で同様となっています。
つまり、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの手数料は標準的な水準となっています。
これまでの運用成績は実際どう?
設定来の運用成績を分析
これまで見てきた限りでは良くない評判が多いですが、実際の運用成績はどうなっているのでしょうか。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドのこれまでの運用成績を見てみましょう。
出典:マンスリーレポート
基準価格の騰落率(2023年8月31日時点)
1ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 設定来 |
-6.42% | 12.46% | 19.55% | 13.44% | -40.26% |
2021年4月26日に設定されて以来、右肩下がりで推移しています。さらに、その下がり方も大きく設定来で見ると-40%を超えています。
推移を見てみると上がったタイミングはほとんどなく、投資している人はほぼ全員が含み損の状態だと推察されます。
かなり悪い成績ではありますが相場が悪かった可能性もありますので、念のためインデックスとも比較してみましょう。
インデックスと比較してみる
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの設定来の運用成績を、ナスダックとS&P500と比較してみましょう。
結果がこちらです。
ナスダック総合指数 +34.01%
S&P500 +50.56%
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンド -38.97%
マーケットと比較しても大きく落ち込んでいます。この期間において相場が特に悪かったわけではなく、単純にグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドが大きく下落しただけだということが分かりました。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドは今後どうなる?
なぜグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの運用成績は落ち込んでいるのか?
基本的にグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの投資先はハイテクグロース株です。
なぜ、これほど運用成績が落ち込んでいるかというと、アメリカは現在強烈なインフレに見舞われており、その対策として利上げを行っているからです。
金利が高いと経済活動は縮小する方向に傾くため、経済成長に期待するのが前提のグロース株は低迷します。
グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの今後の見通しは?
それでは、米国の金利が下がるのはいつになるでしょうか?
FRB当局者の見通しによると以下のような見解となっています。
2023年から24年にかけての政策金利については、見通しは分かれている。FOMC参加者の約3分の1が24年末まで4%を超える水準にとどまると予想する一方、3分の1は24年中に2.5~3.5%まで引き下げられると見込んだ。残りの3分の1はその中間の水準に下がるとみている。
2024年末までは4%を超えると予測する人が約3分の1となっています。一番下がると楽観的な予測をした人達でも2.5~3.5%の予想です。
この見通しでいくと、少なくとも2024年の間は金利が下がらないことが十分に予想されます。
そうなると、金利が下がり始めるのは早くとも2025や2026年になるかもしれません。
そして、金利が下がってようやくそこから株価が上昇に転じるので、グローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドの回復を期待するなら最低でも5年くらいは持つ必要があると思われます。
正直とても忍耐がいる運用方法になりますので、思い切ってグローバル・エクスポネンシャル・イノベーション・ファンドを損切りして他の資産運用に回していくのも全然アリだと思います。
5年待っても期待通り上がるか分かりませんし、何より機会損失も大きいです。
苦渋の決断ですが、損切りしてもっと利益が見込める資産運用に乗り換えることをおすすめします。
個人的にはどんな相場でも安定して利益を出してくれるヘッジファンドが良いと思います。
ヘッジファンドの詳細やおすすめの個別ヘッジファンドについては下の別記事で解説していますので、ぜひそちらも確認してみて下さい。