日本の投資信託では、野村や三井など大手運用会社による商品が主流ですが、ひふみ投信やさわかみ投信のように独自に運用されている独立系投資信託もあります。
独立系投資信託ではファンドマネージャーが表に立ち、それぞれ独自の理念を持って資産運用していますので一般的な投資信託よりも特徴が際立っています。
今回は、独立系投資信託の中でも老舗であるさわかみファンドについてその評判や運用実態を解説していきます。
さわかみファンドでの運用を検討中の方はぜひ参考にしてみて下さい。
また、別の投信については下記にも記載していますので良ければそちらもご参照ください。
さわかみファンドと同様の他の独立系投信についても解説しています。
さわかみファンドの特徴
さわかみ投信の歴史
出典:さわかみ投信株式会社HP
さわかみ投信は日本初の独立系運用会社として、1996年に設立されました。創業者は澤上篤人氏です。
そして、1999年にさわかみファンドの運用をスタートさせており、「独立系運用会社の老舗」というのがさわかみ投信の位置づけです。
さわかみ投信で扱っているファンドは「さわかみファンド」一本です。このただ一つの商品を20年以上運用し続けているところに歴史を感じますね。
さわかみ投信の経営理念
続いて、さわかみ投信の経営理念について見ていきましょう。
本格的な長期投資で世の中をおもしろくしていこう。
自分自分といって生きるよりも、「いい社会をつくっていこう」で心を一にして、皆で力をあわせて日々の仕事にあたろう。まずは、社内をおもしろくするのだ。
出典:さわかみ投信株式会社HP
何よりもまず「長期投資」がさわかみ投信の特徴です。さわかみ投信では投資を航海に例え「長期投資の旅に出航しよう」という表現をしています。
さわかみ投信のロゴにも船が使われていますね。とにかく10年、20年、さらには子孫に相続、というような超長期投資を推奨しています。
投資家とのつながりを重要視
一般的な投資信託では利益を第一に追求するのが普通ですが、さわかみファンドではそうでもありません。
さわかみファンドでは顧客のことを「ファンド仲間」と呼んでおり、運用報告のレポートだけではなく、勉強会や感謝会、企業訪問ツアーなど様々なイベントを実施しています。
ただの顧客ではなく、理念に共感してくれる仲間を増やしたいというのがさわかみ投信の考えです。
ですので、普通は様々な証券会社を通してファンドを販売するのですが、さわかみ投信では投資家とのつながりを持てる自社での直販スタイルを貫いています。
さわかみファンドの運用責任者
そんな特徴的な理念を持つさわかみファンドの運用責任者についても確認していきましょう。
もともと創業者の澤上篤人氏が運用責任者を務めてきましたが、2013年から草刈貴弘氏にバトンタッチし、そして2022年7月からは黒島光昭氏が務めています。
草刈貴弘氏
出典:さわかみ投信株式会社HP
すごく精悍な顔つきをされていますね。それもそのはず、元は舞台俳優をされていたというから驚きです。
年 | 学歴・職歴 |
2001年3月 | 東洋大学工学部建築学科卒業 |
2001年~2008年 | 舞台俳優として活動後、SBIフィナンシャルショップ株式会社に勤務 |
2008年10月 | さわかみ投信入社 |
2010年4月 | 運用調査部に異動 |
2010年11月 | ファンドマネージャーに就任 |
2013年1月 | 最高投資責任者兼ファンドマネージャーに就任 |
2015年6月 | 取締役最高投資責任者兼ファンドマネージャーに就任 |
経歴を見ると運用に関してはさわかみ投信に入社されてから本格的に学ばれているようです。
運用部に異動してから3年もたたないうちにファンドマネージャーに就任しています。
運用のスキルという観点でみると2年9ヶ月しか運用業務をせず、ファンドマネージャーを務めるのはかなり厳しいのではないかと思います。
ただ、草刈氏に託した澤上会長の言葉を見ると
長期運用に大切なのは「パフォーマンス競争に走らないこと」
(草刈氏は)同社の理念を一番理解できている
ということですので、やはりさわかみ投信においてはパフォーマンスをだすことではなく理念を共有し浸透させられることが重要だということです。
続いて黒島光昭氏についても見ていきましょう。
黒島光昭氏
出典:さわかみ投信株式会社HP
年 | 学歴・職歴 |
1994年 | ハワイ大学バイオシステムエンジニアリング科修士課程修了 |
– | 筑波大学農学研究科博士課程を修了、水処理エンジニア等に従事 |
2008年 | さわかみ投信入社 |
2011年~2012年 | 代表取締役社長 |
2013年 | 退社後、ベンチャー事業に従事 |
2015年 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
2022年 | さわかみ投信へ復帰 |
こちらもかなり異色の経歴ですね。長らく技術者として活躍された後、40代になってからさわかみ投信へ転職されたようです。
そして、わずか3年後には代表取締役社長を務めているのだから驚きですね。資産運用という世界を極めるには3年という期間は短すぎる気がします。
やはり運用能力どうこうというよりは、どれだけ理念を共有できるのかが重要なのでしょう。
さわかみ投信の特徴を一言でいってしまえば、リターンよりも理念を重要視する事だと言えそうです。
さわかみファンドの仕組み
分配金は出す?出さない?
続いて、さわかみファンドの分配金や手数料の仕組みについて確認しておきましょう。
まずは分配金からです。さわかみファンドは再投資専用のファンドとなっており分配金を受け取ることは出来ません。
資産運用では複利の効果を最大限に活かすため、分配しない方が運用効率が良いです。そのため、さわかみ投信の分配しない方針は望ましいです。
さわかみファンドの手数料は高い?安い?
それでは、手数料はどうでしょうか?
独立系運用会社の最大手「ひふみ投信」と比較してみましょう。
さわかみファンド | ひふみ投信 | |
購入時の手数料 | なし | なし |
保有時の手数料 | 年1.10% | 年1.078% |
解約時の手数料 | なし | なし |
購入時手数料と解約時手数料はどちらのファンドも無料です。
保有時の信託報酬は若干さわかみファンドの方が高いですがほぼ同じですね。
独立系運用会社の中で、さわかみファンドの手数料は特に高くも安くもない一般的な手数料水準となっています。
さわかみファンドの投資先
さわかみファンドでは具体的にどんな資産運用を行っているのでしょうか。実際の投資先銘柄を見てみましょう。
組入れ上位20銘柄はこちらです。
(2024年3月29日時点)
No. | 組入銘柄 | 組入比率 |
1 | ディスコ | 5.14% |
2 | 信越化学工業 | 4.86% |
3 | トヨタ自動車 | 4.26% |
4 | ブリヂストン | 3.49% |
5 | テルモ | 3.27% |
6 | ダイキン工業 | 2.92% |
7 | INPEX | 2.63% |
8 | 浜松ホトニクス | 2.45% |
9 | デクセリアルズ | 2.20% |
10 | セブン&アイ・ホールディングス | 2.04% |
11 | TOTO | 1.89% |
12 | 日立製作所 | 1.88% |
13 | 三井物産 | 1.87% |
14 | ニデック | 1.86% |
15 | 三菱重工業 | 1.86% |
16 | 花王 | 1.84% |
17 | キッコーマン | 1.53% |
18 | DMG森精機 | 1.51% |
19 | 三菱商事 | 1.48% |
20 | アサヒグループホールディングス | 1.37% |
日本を代表する大企業が並んでいますね。組入れ銘柄数は136銘柄ですが、残りの銘柄も大企業が中心です。
そして、業種としても製造業などいわゆる昔からの日本企業が多いです。
昔ながらの日本の大企業に長期で投資していくのがさわかみファンドの特徴だと言えます。
さわかみファンドの評判や運用成績とは
さわかみファンドの運用成績
それでは、いよいよさわかみファンドの評判や運用成績を見ていきましょう。
さわかみファンドの過去10年分の運用成績はこちらです。
1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | |
トータルリターン | 25.40% | 10.65% | 12.51% | 9.14% |
標準偏差 | 12.10 | 12.90 | 14.89 | 15.21 |
シャープレシオ | 2.10 | 0.83 | 0.84 | 0.60 |
さわかみ投信は長期投資ですので10年(年率)を見てみましょう。年率9.14%とプラスになっています。これだけ見ると悪くないですよね。
しかし、シャープレシオを見て下さい。
運用効率を測る指標。リスクに対するリターンの割合。1を超えると優良ファンド。
さわかみファンドのシャープレシオは0.60と1を大きく下回っており、運用効率が悪いことを示しています。
TOPIXとの比較
また、さわかみファンドを日本株式市場の代表的な指数であるTOPIXとも比較してみましょう。
直近3年分の推移はこちらです。
- さわかみファンド +30.84%
- TOPIX +38.83%
この結果を見ると株式市場全体が上昇した期間となっています。
さわかみファンドはマーケットに大きく負け越しており、決していい運用成績とは言えません。
さわかみファンドの評判
それでは、さわかみファンドの評判はどうなっているでしょうか。基準価格と総口数の推移がこちらです。
(2024年5月30日時点)
オレンジ色の線を見て下さい。総口数の推移です。2012年ごろまでは右肩上がりで増加していましたが、2013年以降は減少しています。
2013年はアベノミクスもあり株価が上昇した年ですので利確した人が多かったのでしょうか。ただその後も回復には至らず総口数は減少を続けています。
いずれにせよ、2013年以降さわかみファンドを辞める人が相次いでおり、減少傾向が続いていますので評判は芳しくないと言えます。
また、まとまったお金の安全な資産運用については別記事でも解説していますので良ければそちらも合わせてご一読ください。
結論
さわかみファンドについてのまとめはこちらです。
- さわかみ投信は日本初の独立系運用会社
- リターンよりも長期で投資を行い社会に還元していくことを重要視
- 投資家をただの顧客ではなく「ファンド仲間」とし勉強会などを開催
- パフォーマンス競争に走らないことを強調
- 日本の昔ながらの大企業に投資
- 運用成績はマーケットを下回る
- 口数は減少し続けていて評判は芳しくない
ファンドでありながら、パフォーマンス競争に走らないことを強調しているのはかなり特徴的です。
さわかみファンドの理念に共感できる人は投資してみてもいいかもしれません。
ですが、投資先の企業を見ても日本の大企業ばかり並んでいますので、個人的には利益を度外視してまで応援したい企業でもないかなと思います。
他にも利回りや理念が魅力的なファンドはありますので、そちらもぜひ検討してみて下さい。
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