米国金利の動向が世界の投資環境に与える影響は大きいです。
その中で金利の上げ下げに密接にかかわる投資先として債券が注目されています。
金利が大きく動いている昨今、大きなリターンを上げようと債券投資を考えている人も多いのではないでしょうか。
今回は米国債のETF「TMF」について分析して解説していきます。果たしてTMFの買い時はいつなのか?
また、米国の債券やETFについては別記事でも解説していますので良ければそちらもあわせてご一読ください。
TMFとはどのような投資方法?
債券インデックスの3倍の値動き
まずはTMFがどんなETFなのか確認していきましょう。
正式名称は「ディレクション・デイリー20年超米国債ブル3倍ETF」で、ベンチマークは「ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index」です。
TMFはこの20年超米国インデックス(ICE U.S. Treasury 20+ Year Bond Index)の3倍の値動きをするように運用されています。
20年超米国債券インデックスが上昇すれば大きくリターンが出て、下落すれば大きな損失が発生する、そんなファンドとなっています。
手数料は高い?安い?
では、手数料はどうなっているでしょうか。
経費率は年間1.04%となっています。
インデックスファンドと比較すると高いですが、レバレッジ型の投信と比較すると割と一般的な水準かと思います。
すなわち、TMFの手数料は特に高くも安くもない手数料だと言えるでしょう。
TMFはどこで買えるの?
米国のニューヨーク証券取引所に上場しているETFですが日本からも購入が可能です。
例えば、マネックス証券でもTMFを販売しています。
出典:マネックス証券
ブルやベアのレバレッジ型ETFはいくつも取り扱いがあり、TMF以外にはS&P500連動などがあります。
何ならこちらの方が認知度は高いかもですね。
さぁ、ではTMFの利回りについて見ていきましょう。
TMFの利回りとは?
ハイリターンを狙える
TMFはレバレッジ型のファンドであり実際の指数の3倍の動きとなります。
そのため、非常に大きなリターンを狙うことが可能です。
一方で、これは同時に大きな損失が発生し得ることも意味しています。
過去のパフォーマンスを見ると2020年には472を記録していたのが40ほどまで下落しています。
このように何と90%以上下落することも十分にあり得るのです。
配当利回りとは?
続いて、配当利回りはどの程度なのでしょうか。
直近配当利回りは2.91%となっています。
TMF | 2.91% |
---|---|
TLT(iシェアーズ米国債20年超ETF) | 3.83% |
EDV(バンガード超長期米国債ETF) | 3.86% |
他の債券ETFと比較するとやや配当利回りは低くなっています。
レバレッジ型のファンドですので配当利回りというよりは、キャピタルゲインを狙う商品だと言えます。
非常に大きな2つのリスクとは?
長期投資には向いていない
さぁTMFの詳細を見ていこうと思いますが、とにかく気を付けてほしいのはやはりハイリスクであることです。
一つ目のポイントとして、TMFは基本的に長期で保有することができません。
なぜなら、レバレッジ型ファンドの特長として長期で保有すると基準価格と大きな乖離が出ることがあるからです。
参考までにこちらのSBI日本株4.3ブルでの説明図を見て下さい。
出典:SBI証券
こちらは灰色の基準となる指数が100からスタートして、上下を繰り返しながら再び100に戻っています。
一方で、4.3倍の動きをする赤いファンドは上下を繰り返しながら69.9と大幅にマイナスとなっています。
このようにレバレッジ型のファンドでは、複利の効果で長期で保有すればするほど負けやすい傾向があります。そのため、デイトレのように超短期で投資するのが一般的です。
予測不可能な為替
続いて二つ目のポイントは為替リスクです。
TMFでの投資は、米国の債券インデックスに投資するためドル建てとなります。
日本円からドルに換えて投資をすることになるので、投資を始めた時とやめる時の為替レートによって為替差益が発生します。
円安に進めば利益が増えますが、円高に進むと損失が発生します。
為替レートが今後どうなるかというのは、関係する要素が大きすぎて誰にもわかりません。
コントロール不可&予測不可な為替リスクを抱えることは、ギャンブルをしているのと一緒なのです。
TMFの評判や口コミは
続いて、TMFの評判や口コミについても見ていきましょう。
掲示板を見ると色々な人の口コミを見ることができます。
出典:Yahooファイナンス
TMFを長期間保有する人に対する「それは難しいのでは!?」というコメントですね。
恐らく元々長期保有すると書き込んだ人は、先ほど解説した「長期で保有すると負けやすい」というレバレッジ型ファンドの特長を知らないのだと思われます。
複雑な金融商品を購入するときは下調べが重要で、そういう意味ではTMFも初心者向きではないと言えそうです。
全体的なTMFの評判としては、可もなく不可もなくといった印象を受けました。
TMFの買い時はいつなのか
絶対におさえるべき基本原則とは
さぁ、それではいったいTMFの買い時はいつなのでしょうか。
TMFを検討している人はご存じでしょうが、まず最初に確認すべき大前提があります。
それはこちらです。
- 金利が上がると債券価格は下がる
- 金利が下がると債券価格が上がる
金利が上がると、既存の債券の金利が相対的に低くくなり魅力がなくなるため価格が下がります。
金利が下がると、逆のことが起こって債券価格は上がります。
試しにTMFと米国債(10年)の利回りを比較してみましょう。
比較してみると概ね逆の動きをしていることが分かりますね。
このように金利と債券価格は逆に動く関係性にあるのです。
下がると上がるはずなので・・・?
さぁ、これを踏まえてTMFの買い時はいつなのでしょうか。
米国はインフレ抑制のため近年利上げをおしすすめており、金利は高い水準にとどまっています。そして、TMFも低価格となっています。
一方で、今後の流れとして米国は利下げしていく方針を示しています。
長期的に見れば、金利は下がっていき債券価格は上がっていくはずなのでTMFは買い時と言えば買い時のはずです。
しかしながら、先ほども申し上げたようにTMFはレバレッジ型ETFのため長期保有ができません。
ですので、今を買い時とみなしてレバレッジをかけていないTLT(iシェアーズ米国債20年超ETF)を購入するのも一つの投資法としてアリかなと思います。
TMFはおすすめしない理由
という訳でTMFをここまで見てきましたが、基本的にはあまりおすすめしないです。
その理由をまとめていきます。
レバレッジでハイリスクハイリターン
まずレバレッジ型ETFのためハイリスクハイリターンです。
ボラティリティが高くリターンも出るかもしれませんが、マイナスとなった時の損失も大きくなりやすいです。
指数と乖離するので長期で持てない
さらに、リスクのところで説明したようにレバレッジ型の特性から長期保有ができません。
デイトレのように短期で売買しなければいけなくなるので投資というよりはギャンブルになってしまいます。
為替リスク
また基本的には避けるべきである為替リスクもとることになります。
為替はどちらに動くか分かりませんし、ドル円であっても数十パーセント動きますので影響度も高いです。
以上の理由からTMFはおすすめしません。
もしどうしてもやりたいという方がいるなら、それは専業トレーダーのようにデイトレをする形になると思います。
少なくとも本業がある一般投資家には向いていません。一般投資家の方には、TMF以外の運用手法を検討することをおすすめします。