「投資をこれから始める」もしくは「投資を始めたばかり」という運用初心者の方はどこのファンドに投資すべきか判断するのが難しいと思います。
そこで本記事では、人気を集めている「米国株配当貴族(年4回決算型)」について分析していきます。投資を検討している方はぜひ参考にしてみて下さい。
その他の投資信託についても別記事で解説していますので良ければそちらもあわせてお読みください。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の特徴とは
米国株式配当貴族(年4回決算型)の運用戦略とは
それではまず、米国株式配当貴族がどんな投資信託なのかから確認していきましょう。
米国株配当貴族(年4回決算型)は「S&P500配当貴族指数」に連動するように運用されるインデックスファンドです。
「S&P500配当貴族指数」を構成するのは、S&P500のうち連続増配25年以上、時価総額30億ドル以上を満たす銘柄となっています。
出典:野村アセットマネジメント
増配し続けられるのは安定して収益が出ている会社となりますので、S&P500の中でも歴史のある大型企業に投資するのが「米国株式配当貴族」の運用戦略となっています。
NISAで買える?
米国株式配当貴族(年4回決算型)はNISAの対象です。
NISAは個人投資家向けの税制優遇制度で、利益が出た際に非課税とすることができます。
年間の投資額の上限は決まっているのですが、個人投資家にとっては有利な制度なのでNISAで投資を始めるという人も多いでしょう。
そういった方にとっても米国株式配当貴族(年4回決算型)は選択肢の一つとなってきます。
年4回決算型って何のこと?
年4回決算型の意味するところは、基本的に年4回分配金を出しますよ、ということです。
実際に過去の分配実績を見てみましょう。
出典:マンスリーレポート
このように3か月ごとに分配金が出ています。この分配金を目当てに投資している人もいるでしょう。
ですが、分配金を出すファンドはおすすめしていません。なぜなら運用にあてられる原資が減ることで運用効率が悪くなるからです。
資産運用できちんと資産を増やしていきたいのであれば、分配するファンドは選ばないようにしましょう。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の掲示板での評判とは
続いて、評判を見ていきましょう。
実際に投資してる人の口コミが見れるYahooファイナンスの掲示板をチェックしていきます。
出典:Yahooファイナンス
売却が多いようですが、そのタイミングで逆に買い増している方のコメントですね。
確かに運用の世界では人気が出た後に買うと高値掴みになりやすいので、他の人とタイミングが違う方がいいと言われています。
出典:Yahooファイナンス
続いては、長期保有を目的に投資している方のコメントです。
短期で見れば上下はもちろんあるが、長い目で見れば上がっていくと考えて保有されていますね。
基本的に口コミはポジティブなものが多く、米国株式配当貴族の掲示板での評判は良いと言えそうです。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の手数料は高い!?
手数料についてもチェックしておきましょう。
米国株式配当貴族(年4回決算型)は米国株に投資するインデックスファンドです。同様に米国株で運用するインデックスファンドと比較してみましょう。
Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式) | 楽天S&P500インデックス・ファンド | 米国株式配当貴族(年4回決算型) | |
購入時手数料 | なし | なし | 最大2.2% |
信託報酬(実質) | 年率0.1155% | 年率0.077% | 年率0.55% |
解約手数料 | なし | なし | 0.1% |
比較してみると購入時手数料、信託報酬、解約手数料すべての項目で米国株式配当貴族は他の2つより高くなっています。
本来手数料が高いこと自体は別に悪いことではないのですが、今回のケースでは全てインデックスファンドとなり特別な運用をする訳ではないので手数料が安い方がいいということになります。
特にTracers S&P500配当貴族インデックスのベンチマークも同様に「S&P500配当貴族指数」ですから、米国株式配当貴族のメリットはないと言えるでしょう。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の手数料は間違いなく高いと言えます。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の投資先とは?
気になるポートフォリオとは
それでは具体的にどんなところに投資してるのか見てみましょう。
連続増配年数25年以上と聞くとあまりないような気がしてしまいますが該当企業はなんと67社もあります。
なんと60年以上増配している企業が9社もあるというから驚きですね!
それらの企業はこちらです。
連続増配年数 | 銘柄 | 業種 |
60 | 3M | 資本財・サービス |
60 | コカ・コーラ | 生活必需品 |
60 | コルゲート・パルモリーブ | 生活必需品 |
60 | ドーバー | 資本財・サービス |
60 | エマソン・エレクトリック | 資本財・サービス |
60 | ジェニュイン・パーツ | 一般消費財・サービス |
60 | ジョンソン・エンド・ジョンソン | ヘルスケア |
60 | プロクター・アンド・ギャンブル | 生活必需品 |
60 | ケンビュー | 生活必需品 |
投資比率は基本的に均等割りです。概ね該当企業に1.5%~1.6%の資産が割り当てられています。
どこかで見たことある大企業ばかりが並んでいますね。
連続増配年数は驚くべきものがありますが、ポートフォリオの配当利回り(年率)は2.4%です。
25年以上増配している企業に絞られてはいますが、だからといって配当利回りが高いという訳ではないので注意していください。
投資セクター比率
さらに特徴的な投資セクター比率も確認しておきましょう。
業種 | 純資産比 |
化学 | 9.3% |
機械 | 8.7% |
家庭用品 | 7.3% |
保険 | 6.2% |
食品 | 5.6% |
その他の業種 | 62.2% |
その他の資産 | 0.6% |
出典:マンスリーレポート
驚くべきは化学や機械がトップを占めていて、「情報技術」の分野が非常に少ないことです。
S&P500では当然「情報技術」セクターが第一位で、アップルやマイクロソフト、エヌビディアといった定番の顔ぶれが並んでいますが、米国株式配当貴族にはこれらの企業が含まれていないことを意味しています。
情報技術セクターが少ないことで、下落局面では損失を軽減できる可能性がありそうですが、逆に上昇局面では物足りない伸びとなりそうです。
米国株式配当貴族(年4回決算型)の運用成績とは
設定来の運用成績
さぁ、このような運用をしてきた結果、運用成績はどうなっているでしょうか。
設定来の運用成績はこちらです。
出典:マンスリーレポート
- ファンド 124.6%
- インデックス 134.5%
こちらは分配金を再投資したものとして計算していますので、実際にはこれほどの運用成績は出ませんがパッと見、右肩上がりで悪くないように見えますね。
ですが、これだけではわからない部分もあるのでマーケットとも比較してみましょう。
マーケットと比較してみる
米国株式配当貴族(年4回決算型)の成績をS&P500と比較してみます。
- 米国株式配当貴族(年4回決算型)+59.72%
- S&P500 +89.11%
米国株式配当貴族はS&P500に大きく負けていますね。
確かに下落局面には強いのですが、やはり情報技術分野がないことで米国株の魅力である大幅な上昇による利益を享受できなくなっています。結果として運用成績は振るっていません。
S&P500よりもわざわざS&P500配当貴族指数を選ぶ理由はないと言えそうです。
米国株式配当貴族(年4回決算型)をおすすめしない理由とは
では、最後に米国株式配当貴族(年4回決算型)をおすすめしない理由をまとめてみます。
- 分配金を年4回も出しており運用効率が悪い
- 同種のインデックスファンドよりも手数料が圧倒的に高い
- 配当利回りそのものが高いわけではない
- 情報技術分野への投資が薄く大幅な伸びが期待しづらい
- S&P500に運用成績は負けている
評価や評判は一見良さそうなのですが、きちんと見ていくとおすすめ出来ないファンドとなっておりますので、初心者の方は注意していください。
私が個人的に分析しておすすめのファンドは下記ランキングにてまとめていますので、投資先をお探しの方はぜひそちらもチェックしてみて下さい。