近年、日本郵船株が注目を集めています。
それもそのはず!こちらの配当利回りランキングを見て下さい。
出典:Yahooファイナンス
1位、2位、3位を海運の大手3社で占めていて、5位、6位にも海運株が来ています。
そして、その配当利回りも+7%~+15%と信じられないくらい高くなっており、日本郵船は堂々の配当利回り14%です。
さらに、これまでの日本郵船の株価の推移を見てもうなぎ登りで成長しています。
日本郵船の株価
なんと、コロナショック直後から考えると10倍に成長しています。
日本郵船の株価はなぜ10倍にあがっているのでしょうか?そして、今から投資しても間に合うでしょうか、遅いでしょうか。
分析して解説していきますので日本郵船への投資を検討している方はぜひ参考にしてみて下さい。
また、別記事でも個別株について解説していますので良ければそちらも合わせてご覧ください。
日本郵船はどんな会社?
会社概要
まず日本郵船の概要から見ていきましょう。
会社名 | 日本郵船株式会社 |
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本店 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番2号 |
創立 | 1885年9月29日 |
資本金 | 約1443億円 |
事業内容 | ライナー&ロジスティクス事業、不定期専用船事業、その他事業 |
上場鳥行所 | プライム |
日本郵船のスタートは、岩崎彌太郎が設立した九十九商会(後の三菱照会)です。すなわち、日本郵船は天下の三菱グループの海運会社となっています。
当然、本店は丸の内にあり資本金も1443億円ある超超超大企業です。
事業内容
事業は主に3つに分けられますが、その中でありとあらゆるタイプの船を展開しています。
出典:日本郵船株式会社
日本郵船を一言で表すと総合海運企業と言えるでしょう。
また、定期コンテナ船事業に関しては、ライバルの商船三井と川崎汽船と事業を統合し2017年に新会社「Ocean Network Express Pte. ltd.」を設立しています。
この背景には、2010年代は海運不況が続きスケールメリットを求めて統合せざるを得ない状況がありました。
厳しい状況が続き、2020年のコロナショック時には株価もどん底まで落ちました。
そんな状況からどのように回復してきたのでしょうか。
日本郵船はなぜ株価が10倍に上がったのか?
業績ハイライト
日本郵船の株価復活の理由をさぐるため、ここ数年の業績の推移を見てみましょう。
出典:日本郵船株式会社
売上高は増えているものの、そこまで大きな変化ではありません。一方で、経常利益は2019年から比べると24倍と驚愕の成長を見せています。
この急成長の要因はコンテナ船部門の利益急増です。2020年に新型コロナウイルスが流行し巣ごもり需要が増加しました。
需要が増えた一方で、コンテナ船の供給には船を建造する期間(1~2年)が必要なため需給ギャップは拡大していきました。
そのため、コンテナ船の運賃はぐんぐん上昇し利益も大幅に増える結果となりました。
コンテナ船の収益激増
先程ご紹介した通り、日本郵船のコンテナ船事業は3社共同の「Ocean Network Express Pte. ltd.」が行っています。
そのため、コンテナ船の利益は営業外収益に計上されるので、どのように増えたのかチェックしておきましょう。
2021年3月期と2022年3月期の有価証券報告書はこちらです。
2021年3月期には前年に比べて6.9倍も成長しました。しかし、それで終わりではありません。
コンテナ船部門の快進撃はさらに続き、翌年にはさらに4.7倍に成長しています。
2年間を通してみると何と33倍もの急上昇を果たしました。
この利益の爆発的な上昇に合わせて株価も上昇し10倍もの成長を見せてきたのです。
日本郵船の配当はなぜ高いのか?
日本郵船株で配当を受け取る条件は?
続いて、日本郵船の高い配当についても確認しておきましょう。
まずは、受取条件からです。配当を受け取るためには定められた日に株式を保有している必要があります。
事業年度 | 4月1日から翌年3月31日まで |
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定時株主総会 | 6月開催 |
同窓会権利行使株主確定日 | 3月31日 |
利益配当金支払株主確定日 | 3月31日 |
中間配当金支払株主確定日 | 9月30日 |
このように日本郵船では年2回、配当を受け取ることができます。実際には名簿の登録の関係上、2営業日前に保有している必要がありますので注意して下さい。
なぜ配当利回りが高いのか?
そして、近年の日本郵船の配当は圧倒的に高いです。決算短信をチェックしてみましょう。
2022年3月期の配当額は1,450円となっています。
2023年3月期は期末が160円となっていますが、2022年10月1日付で1株につき3株の割合で株式分割していますので実質480円です。そのため、年間では1,530円となっています。
逆に株式分割後の基準で考えるとそれぞれ483円と510円となります。
記事執筆時点での株価が3549円ですので、配当利回りは14.3%(510÷3549)となります。
株価が低いからとかではなく単純に配当の金額がとても大きいので配当利回りも非常に大きくなっています。
高い配当は続くのか?
それでは、この大きい配当金額は適正な値なのでしょうか?
これを判断するには配当性向という指標があります。配当性向は企業が稼いだ純利益の内、何%を配当に回すかという指標です。
日本郵船の配当と配当性向の推移を見てみましょう。
出典:日本郵船株式会社
配当性向は25%程度というところでしょうか。日本企業の平均が30%と言われていますのでやや低い水準となっています。
つまり、配当性向から考えると通常か平均以下程度の配当しか出していないが、利益があまりにも大きいため配当利回りも高くなっているのです。
しかしながら、これまでの推移を見てみると2016年のように0円の年もありますし、近年のバブルでたまたま高配当が貰えていると考えるのが自然だと思います。
日本郵船の株は買い時?売り時?
さぁ、それでは結局のところ日本郵船の株は買うべきなのでしょうか。止めた方が良いのでしょうか。
日本郵船株の割高・割安について分析していきましょう。
まずは、「みんかぶ」ではどんな予想がされているのか確認しておきましょう。
出典:MINKABU
このようにみんかぶでの予想は「5,177円」となっています。記事執筆時点での3,549円ですのでまだ1,628円もの上昇余地があると考えられています。
なかなか強気な予想ですね!でもちょっと待ってください。内訳を見ると株価診断の理論株価が10,461円となって大きく目標株価を引き上げていることが分かりますね!
個人投資家や証券アナリストの予想はいずれも2,000円代ともう少し控えめであることが分かります。
理論株価は一定の計算式に当てはめて算出していることが予想されるので、今現在のバブル状態の利益がそのまま素直に反映されているんだと思います。
ですので安直にこの理論株価を信じるのは危険です。
という訳で本サイトでも独自に分析していきたいと思います。
本サイト独自の日本郵船株価予想
資産から見る日本郵船の予想株価とは?
企業価値の算出ではものすごく詳細にやっても、結局割引率などの数字を何にするかで結果は大きく変わってしまいます。
ですので、株式投資の判断材料とする上ではある程度「えいやっ!」でやってしまって大丈夫です。
ただしその分、計算結果から余裕をもった価格で投資するようにしましょう。
まずは、日本郵船の資産を評価します。今回は分かりやすい現金性の価値に絞ります。
出典:日本郵船株式会社
現金性の資産を抜き出すと次のようになります。
- 現金及び預金 2330億円
- 受取手形 3591億円
- 投資有価証券 1兆1464億円
合計1兆7385億円
固定資産の有価証券に関しては前年に比べて、5,000億円以上も増えています。これはONEが爆発的に利益を出しONEの純資産が急増したためだと考えられます。
今回はそのまま使いますが、より安全に試算するならONEの資産状況を精査するのが良いと思います。
では、続いて負債をチェックしてみましょう。
出典:日本郵船株式会社
負債合計は1兆3209億円となっています。
先程の現金性資産の合計額から引くと1兆7385億円 ー 1兆3209億円=4176億円です。
これを発行済み株式数(=510,165,294株)で割りましょう。
計算すると1株当たり818円となります。これが日本郵船の保有する現金性の資産から考えられる株価です。
利益から見る日本郵船の予想株価とは?
続いて、日本郵船が生み出す利益から株価を考えてみましょう。
コンテナ船部門の収益が大きく影響してきますので今回は営業利益ではなく経常利益を用いて考えます。日本郵船の経常利益の推移は次のようになっています。
出典:日本郵船株式会社
ちょっとばらつきが多すぎでどうしたものか迷いますね!笑
一応、5年で平均をとると2577億円となります。
ただし、やはり2021-2022の業績はバブルとして除外して考えるのが安全だと思います。という訳で2018-2020の3年で平均をとると234億円です。
割引率を10%として考えて、ざっくり次のように計算できます。
事業価値=234億円×(1-法人税率)/割引率=1,638億円
これを先程と同様、発行済み株式数(=510,165,294株)で割りましょう。
すると、一株当たり321円です。(ちなみに5年平均の利益を使うと3,535円となります。)
という訳で日本郵船の株価予想をまとめると次のようになります。
利益が以前の水準に戻るなら、日本郵船の株価は1,139円程度が適正だと思います。
現在の3,500円程度の価格は高すぎると言えるでしょう。
では、最後に日本郵船の今後の見通しを考えてみましょう。
日本郵船の今後の見通しはどうなる?
日本郵船は今後も今のバブル状態が継続するのでしょうか?
コロナウイルスが流行したことで物流の需要は増加しました。一方で、コロナウイルスの影響で海上輸送や港湾等で制限がかかった事、さらに船の建造には1~2年といった期間を要することから供給は増えませんでした。
需給のギャップがどんどん拡大したことで輸送価格が急上昇したためバブルはおとずれました。
ではこの運賃は今後どうなっていくでしょうか。定期船の運賃市況を見てみましょう。
出典:日本郵船株式会社
このように急激に高騰した運賃は、急激に下落しバブル前の状態へと戻りつつあります。
利益水準がバブル前に戻るのであれば、株価水準も先程計算した通り1,100円程度へと向かっていくのが自然だと言えます。
結論としては、今から日本郵船株に投資するのはおすすめできません。
これから資産運用を始めるのであれば他にも良い投資先はたくさんあります。
研究・分析した結果良いと判断できたファンドは下のランキングにまとめています。
投資先をお探しの方は良ければ下記ランキングも参考にしてみて下さい。