株価の上昇や高配当で話題を集めている海運業界ですが、今から投資しても大丈夫なのでしょうか。
川崎汽船はコロナショック後の相場から10倍以上に株価が上昇しています。さらに、高配当銘柄としても注目されていますね。
高配当や株価上昇だけを見て投資するのは危ないです。投資価値があるかどうかしっかりと分析していきましょう。
また、別記事でも個別株について解説していますので良ければそちらも合わせてご一読ください。
海運業界が注目を集めている理由とは
驚愕の高配当
日本株式の平均配当利回りは約2%です。そんな中で海運業界の配当利回りはどうなっているでしょうか。
Yahooファイナンスの高配当利回りランキングを見てみましょう。
出典:Yahooファイナンス
なんと「1位」、「2位」、「3位」、「5位」、「6位」を海運が占めています。
そして配当利回りも驚愕の「+15.51%」、「+14.23%」、「+12.01%」、「+8.24%」、「+7.71%」となっています。
株価も急上昇
そして、海運業界は株価も上昇しています。
大手3社の株価の推移を見てみましょう。
日本郵船
商船三井
川崎汽船
軒並み2020年のコロナショック後からとてつもない勢いで上昇していますね!
特に川崎汽船は最高15倍以上もの成長を見せています。
という訳で、今回は川崎汽船について注目していきましょう。
川崎汽船はどんな会社?
会社概要
まず、川崎汽船とはどんな会社なのでしょうか。
様々な船を保有し日用品から石炭や穀物、自動車など何でも運ぶ海運会社です。さらに海上貨物層だけでなく陸上輸送や倉庫事業も組み合わせて総合物流企業へと進化を遂げています。
海運会社は色々な船を作って保有しモノを運ぶことで利益を得ています。回転の速い不動産オーナーみたいなイメージでもいいかもしれませんね。
ただし、家を借りたい人と違って船を使ってモノを運びたい人は急激に増えたり減ったりするのが不動産とは違う点となっています。
出典:川崎汽船株式会社
運ぶものに合わせて色んなタイプの船がありますよね。今後、輸送の需要は増えるのか減るのか、また増えるならどのタイプの船の需要が増えるのか、海運会社にとってはこういったことを考える事が重要になってきます。
さらに、船を作るには1~2年ほどかかります。ですので、1~2年先の需要を読むことが必要となり運の要素も大きくなってきます。
コンテナ船の3社統合
こういった海運業界の特性上、それぞれの会社は独自の戦略を持っていました。
例えば、日本郵船は海上だけでなく陸上や空の輸送にも力を入れることでリスクヘッジを試みてきました。
逆に商船三井は大胆に船に投資することで大きな利益を上げることもありました。
しかし、2017年に主要な部門であるコンテナ船に関して「日本郵船」、「商船三井」、「川崎汽船」の3社で統合されることになりました。
会社名は「OCEAN NETWORK EXPRESS PTE.LTD」です。頭文字をとってONEと刻印されています。
当時、これは業界全体に衝撃を与える非常に大きなニュースとなりました。
2000年代は海運バブルと言われていましたが、2010年代は海運不況に苛まれ業界的にも合併や再編が相次いでいる状況でした。
3社のコンテナ船部門を統合することで積載効率を向上させ、世界と戦っていけるようにすることが狙いだったと言われています。
このような歴史を経てコロナショックで落ち込んでいた川崎汽船の株価はどのように回復していったのでしょうか。
なぜ株価が10倍に上がったのか?
川崎汽船の業績推移
まずは、川崎汽船の業績を見ていきましょう。
出典:川崎汽船株式会社
2019年には赤字となっていた川崎汽船ですが、2021年3月期以降業績が回復し、2022年3月期にはとんでもないほどの大幅回復となりました。
この要因を確かめるためにセグメント別の利益を見ていきましょう。
製品物流の分野がなんと前年比513%もの上昇を見せています。川崎汽船の利益をグイグイと押し上げていますね。
これを実現したのは製品物流の中でも先程出てきたコンテナ船を事業とするONEです。
つまり、コンテナ船の利益が急増したので、川崎汽船の利益も急増したのです。
2020年に入ってから、新型コロナウイルスの影響により巣ごもり需要が増え荷物の輸送需要が急増しました。
しかし、コンテナ船を急に増やすことは出来ないので需要が過多の状況が続き運賃が高騰して川崎汽船の利益は急増しました。
コンテナ船市況は今後どうなる?
川崎汽船の今後の株価を考えるにあたって、コンテナ船が引き続き高い利益を上げられるかが重要です。
果たして、今後もコンテナ船の需要は高止まりを続けるのでしょうか。
コンテナ船の運賃市況は次のように変化しています。
出典:川崎汽船株式会社
ピーク時には通常時の5倍~10倍ほどに高騰していた運賃は、2022年の夏ごろから急落しはじめ以前の状態に戻ろうとしています。
2020年の初めからコロナウイルスが流行したことを考えると、やはり1~2年たってコンテナ船の供給も増え、需要と供給のバランスが取れてきたという事でしょう。
今後また以前のように急激な価格高騰が起きるかというと、なかなか発生しないのではないかと言えます。
川崎汽船の配当をもらえる条件とは
確かに、高配当ですし配当を狙って投資したいという人もいると思います。
配当を受け取るためには権利確定日に株式を保有していることが条件です。実際には名簿登録の関係上、2営業日前に保有している必要があります。
川崎汽船の権利確定日は次のようになっています。
決算期 | 3月31日 |
---|---|
定時株主総会 | 6月 |
同上総会権利行使株主確定日 | 3月31日 |
配当金受領株主確定日 | 3月31日 |
なので、3月31日の二日前、3月29日に保有していれば、10%程度の配当を見込むことができます。
しかしながら、3月30日以降に株価が急落する可能性も考えられます。株価が下がったら元も子もありませんよね。
ここまで川崎汽船の株価は急上昇してしまっているため、今の利益水準が崩れたら一気に1/2や1/3、はたまた1/10の株価に下がっても不思議ではありません。(もともとは1/10以下の株価がついていたわけですから。)
大きな損失の可能性がある状況で投資するのは得策ではありません。やはり配当狙いの投資であっても川崎汽船への投資は危ないというのが私の結論です。
川崎汽船の今後の見通しとは
さて、まとめると今から川崎汽船の株への投資するのはどうでしょうか。
本来、株式投資というのは利益が安定的に増加し続けていく企業に投資すべきだと思います。
しかし、海運業界というのはこれまで見てきた特性上、赤字を出したり大きな黒字を出したりと変動幅が大きいです。
しかも、急激に増えたり減ったりしますし、その要因も景気やコロナなどの特別な状況に左右されますので予想することは困難です。
さらに、先程見た通り運賃市況は急激に下落しており、バブル前の利益水準に戻ることが予想されます。今から川崎汽船に投資するのは非常に危ないと言えるでしょう。
短期間で大きく利益が出て羨ましく思えますが、資産運用では損失を出さずに運用し続けていけることが最も大切です。
資産運用をする際はぜひこのことを肝に銘じて投資先を探してみて下さい。