債券は利回りが決まっていて満期まで保有すれば元本保証のため、安全な資産運用だと言われています。
ですが、本当に元本割れしないのでしょうか?
本記事では高利回りで注目されている楽天の社債について解説していきます。利回りだけにつられて投資すると大きな落とし穴があるので注意して下さい。
悩んでいる方はぜひ購入前に本記事を読んで参考にしてみて下さい。
また他企業の社債についても解説していますので良ければそちらも合わせてお読みください。
楽天の発行する債券てどんなもの?
なぜ社債を発行するの?
まず大前提ですが社債とは何かご存知でしょうか。
企業はビジネスを行うにあたってまず資金を調達する必要があります。お金がなければ何もできませんからね。
資金調達の方法としては、銀行から融資を得る事もあれば社債を発行して資金を調達することもあります。
社債を発行するという事は、平たく言えば投資家からお金を借りることになります。
楽天の発行する社債とは
そして、楽天では定期的に社債を発行しています。
名称 | 発行日 | 期間 | 利率 |
第22回無担保社債 | 2023/2/10 | 2年 | 3.30% |
2024年11月満期ドル建無担保社債 | 2023/1/20 | 1年10ヶ月 | 10.25% |
2024年11月満期ドル建無担保社債 | 2022/11/30 | 2年 | 10.25% |
第21回無担保社債 | 2022/6/13 | 3年 | 0.72% |
第20回無担保社債 | 2021/12/2 | 15年 | 1.50% |
第19回無担保社債 | 2021/12/2 | 12年 | 1.30% |
第18回無担保社債 | 2021/12/2 | 10年 | 1.05% |
第17回無担保社債 | 2021/12/2 | 7年 | 0.80% |
第16回無担保社債 | 2021/12/2 | 5年 | 0.60% |
第15回無担保社債 | 2021/12/2 | 3年 | 0.50% |
ここに記載してあるだけでも合計すると5,000億円以上の発行額となっています。
わずか1年ちょっとで5000億円以上も投資家からお金を借りているわけですから、楽天グループはかなり本格的に資金調達を行っていることになります。
ドル建て発行は機関投資家向け?
これらの社債の中でも特に目を引くのは、利回りが10.25%のドル建て債券ですよね。
米国は現在金利が高く、国債でも4%程度の水準となっています。一企業が発行する社債ですから、当然4%にプレミアムをのせた利回りにしなければなりません。
そのため、10.25%の超高利回りとなっていますが、それにしても高いですね笑
こちらのドル建て債券は機関投資家向けですので参考程度ですね。続いて個人投資家向けの楽天社債を見ていきましょう。
募集している楽天社債の詳細とは?
それでは、最新の楽天社債はどうなっているでしょうか。
出典:楽天証券
正式名称 | 楽天グループ株式会社第22回無担保社債(社債間限定同順位特約付) |
---|---|
愛称 | 楽天モバイル債 |
期間 | 2年 |
格付け | A(JCR) |
利率 | 3.30% |
利払い日 | 毎年2月10日および8月10日(年2回) |
発行日 | 2023年2月10日(金) |
償還日 | 2025年2月10日(月) |
発行価格 | 額面100円につき100円 |
買付単位 | 50万円以上、50万円単位 |
こちらは個人投資家向けの最新の楽天社債です。2年という短期間でありながら、利率3.30%ですからかなりの高利回り商品です。
これまでの楽天社債が0.50%~1.50%であったことから、今回の募集の利回りの高さが分かりますね。
ですが、この高利回りにつられて安易に投資判断をしてはいけません。その理由を解説していきます。
社債は危険?元本割れするリスクとは
元本保証を実現する2つの条件
そう思われるかもしれませんが、社債はいつも元本保証な訳ではありません。
元本割れしないためには2つの条件があります。
- 満期まで保有する事
- 発行体に支払い能力がある事
満期まで保有が必須
債券は満期まで保有して初めて元本が償還されます。途中売却した場合は価格が変動しておりいくらになるかは分かりません。
そのため、楽天社債も満期まで保有しないと元本割れする可能性があります。
そう思われるかもしれませんが、きちんと保有し続けるのは意外と難しいです。
今回の楽天社債は期間が2年と非常に短いので比較的容易かもしれませんが、社債を購入したものの途中で売却してしまう人は数多くいます。
病気になってしまった、車が壊れた、子供が私立に行く、家をリフォームする、引っ越すことになった、などなどお金が急遽必要になることはあります。
満期まで保有し続けるのは思ったよりも大変なのです。
発行体は大丈夫?
また、当たり前ですが発行体に支払い能力がある事も必須です。仮に楽天が倒産してしまったら元本が返ってくるわけないですよね?
楽天が今後きちんと利益を出し続けていくと確信した上で投資するべきでしょう。
もっといえば、今回の社債発行は楽天のモバイル事業のためですから、この事業が上手くいくと自信を持って判断できた場合のみ投資するのが理想だと言えます。
楽天社債の格付けは良い?悪い?
ここで格付けについても確認しておきましょう。
格付けとは、「この発行体はどれくらい信頼できるのか」ということを示しています。
つまり、楽天がどれくらい安全な発行体に分類されるかという話ですね。
結果はこのようになっています。
日本格付研究所 | A(ネガティブ) |
---|---|
S&P | BB(ネガティブ) |
日本格付研究所では、「AAA」、「AA+」、「AA」、「AA-」、「A+」、「A」、「A-」とある中で「A」の評価となっています。さらに今後の見通しはネガティブとなっていますね。
S&Pにおいてはもともと一つ上のランクでしたが、業績や財務内容が想定を下回っているとの事でBBに引き下げられました。
このように楽天への評価はあまり良くないと言えます。
なぜこのような評判になっているのでしょうか。楽天の業績について見ていきましょう。
楽天は意外とやばいって知ってました?
楽天の業績ハイライト
楽天のここ数年の売上と利益は次のようになっています。
出典:楽天グループ株式会社
売上は1兆6,817億円と巨額になっている一方で、利益はマイナス1,947億円と大幅な赤字となっています。
それではなぜこんなに赤字になってしまっているのでしょうか。もう少し細かく見ていきましょう。
セグメント別業績
楽天グループの主なビジネスのカテゴリーは3つです。
- 楽天市場を中心としたインターネットサービスセグメント
- 楽天カードや楽天ペイ、楽天銀行などのフィンテックセグメント
- 携帯電話事業のモバイルセグメント
そして、それぞれの業績は次のようになっています。
出典:楽天グループ株式会社
インターネットサービスセグメントは、特に問題なく経営できていますね。22年第3四半期で198億円の利益となっています。
出典:楽天グループ株式会社
フィンテックセグメントは利益率も高く、22年第3四半期で251億円の利益となっています。
ということはモバイルセグメントに問題がありそうですね。
出典:楽天グループ株式会社
モバイルセグメントは22年第3四半期で1,208億円の赤字となっています。
つまり、楽天グループは他の事業の利益が吹き飛ぶほどの圧倒的に大きなマイナスをモバイル事業でたたき出しているのです。
モバイル事業を始めてから楽天は過去最高の赤字額を更新しています。
このマイナスをどうにかするために、テコ入れするための資金が必要です。その調達方法が今回の社債発行なのです。
楽天のモバイル事業は今後どうなる!?
過去最大の赤字をたたき出すほど楽天グループの足を引っ張りまくっているモバイル事業は今後どうなっていくでしょうか。
楽天モバイルの契約数は2022年3月末時点で491万件に達していましたが、「0円プラン」の廃止の影響もあり9月末時点では455万件まで減少しました。
一説によるとこの契約数が1600万件まで伸びれば黒字化するとも言われています。果たしてそれだけの成長を見せることが出来るでしょうか。
楽天モバイルの売りは安価な事です。一昔前ならただ安いだけでも魅力はあったと思いますが、近年ではどうでしょうか。大手キャリアも安価なプランを打ち出しています。
例えば、基本料金をざっくり比較するとこのようになっています。
楽天モバイル | 980円~2980円 |
---|---|
ahamo | 2970円~4950円 |
povo | 0円~(データは別途追加) |
料金もそう大きく変わらず、通話品質やサービス提供エリアを考えると楽天モバイルを選択するメリットはあまりないように思えます。
このまま契約数が伸びず、モバイル事業が赤字のままというのも十分考えられるシナリオです。
まとめ
楽天の社債発行は、赤字を垂れ流しているモバイル事業のテコ入れのためです。
こう言われたら断る人が多いのではないでしょうか。
それなりのリスクを侵して、利率は3.30%です。税金を抜いたらわずか2.6%です。リスク・リターンが見合っていません。
それよりも、もっと良い利回りの資産運用はあります。投資先を選べば利回り10%~も十分に狙える範囲です。
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